納豆の健康効果について(3)

ナットウキナーゼ(第3回):今回は、第2回で横に置いておいたメカニズムに迫ります。

 かなり古い研究にはなりますが、1985年のJ Clin Investに興味深い論文が掲載されています。それは日本人健常者で行われた臨床研究で、プラセボ投与群やウロキナーゼ単回(1日)経口投与群の血清には殆ど認められない分子量約53 kDaのウロキナーゼ様蛋白質が、7日間連続でウロキナーゼを経口投与した群の血清中からは単離できるというのです。その蛋白質は抗体を固定化したアフィニティーカラムで精製されており、生化学的にも免疫学的にもウロキナーゼ蛋白質で間違いはなさそうです。ただし活性は非常に弱いという特徴がありその理由は明らかではありません。研究者らは血液中のウロキナーゼ様蛋白質の多くは消化管から吸収されたもの、とは考えておらず、一部吸収されたウロキナーゼが、肝臓や血管内皮でのウロキナーゼの合成や循環血中への遊離を促すのではないかと考えているようです。そもそもウロキナーゼは、ウロという名前からわかるように、生体内で合成される抗血栓分子としてヒトの尿から発見された酵素蛋白質です。一方ナットウキナーゼに話を戻すと、これも古いのですが1995年のBiol Pharm Bullではラットに経口投与したナットウキナーゼは、消化管から吸収されると報告されています。ただ同じ研究者らが2011年のBiol Pharm Bullに発表している論文では、未消化で吸収されるナットウキナーゼに加えて、消化物として吸収されたペプチド断片等の薬理作用の可能性についても言及しています。ヒトで、経口投与したナットウキナーゼが消化管から吸収されて血液中で作用を発揮している、という明確な根拠は未だないと言えますが、どうして経口投与で効果があるのかは、実に興味深いところです。

2018年05月18日