納豆の健康効果について(5)

ナットウキナーゼ(第5回):本シリーズ最終回は、V.Kを除去したサプリメントでナットウキナーゼを摂取するというのではなく、大部分の日本人がそうであろうと思われるV.Kを多く含んだままの「納豆」という食品の形で食べた場合、血栓が関係する心血管疾患(CVD)が減るのか、という最も知りたい話題について見てみたいと思います。それには疫学研究の結果が参考になります。

 2017年のAm J Clin Nutrに岐阜県高山市で行われた疫学研究の結果が報告されています。高山研究は1992年に始まった35歳以上の方を対象に追跡した3万人規模の研究で、調査期間内に1,678名のCVDによる死亡(うち脳卒中677名と虚血性心疾患308名を含む)があったそうです。解析の結果、納豆を最も多く摂取していた群は、最も少なく摂取していた群に比べて25%のCVD死のリスク低下があり、特に男性の脳梗塞では33%のリスク低下であったと報告されています。むろん研究開始当時の食生活を16年間継続していたことが前提ですし、疫学研究宜しく納豆以外の大豆食品の影響も否定することはできないと研究者らは述べています。私見ですが、納豆を最も多く摂取していた群は、最も少なく摂取していた群に比べて女性の割合が有意に高く、そのためか現在の喫煙者やアルコール摂取量が有意に少ないこと、逆に多価不飽和脂肪酸の摂取量や野菜の摂取量が有意に高いことなどは、統計の専門家からは怒られてしまうかもしれませんが、多変量解析がなされているとはいえ本当に結果に影響していないのだろうかという点が多少気になるところではあります。また、納豆を最も多く摂取していた群が平均どのくらいの納豆を摂取していたかについては、熱量で調整されているため本論文からは容易に読み取ることができない点も少し残念です。

2018年06月01日