外的刺激で蛍光波長が可逆的に切り替わる有機蛍光色素を開発

 医薬品機能分析学分野の榎本秀一教授、精密有機合成化学分野の澤田大介教授、神野伸一郎准教授、谷岡卓大学院生 (博士後期課程1年)と、国立研究開発法人 理化学研究所 内山元素化学研究室の村中厚哉専任研究員らの共同研究グループは、固体状態(結晶状態)で近赤外と青色の異なる2つの蛍光波長をもつ有機蛍光色素「cis-ABPX01」を開発し、結晶をすり潰すなどの外的刺激により、近赤外と青色の蛍光波長を可逆的に切り替えることに成功しました。
本研究成果は、米国化学会(ACS)発行の『Journal of the American Chemical Society 』のオンライン版(5月12日付け)に掲載されました。

 有機蛍光色素には、効率良く光を吸収・放出する性質を示すものがあり、ライフサイエンス分野では、生体内の分子や細胞を観察するための目印として用いられています。共同研究グループの神野らは、新有機蛍光色素「アミノベンゾピラノキサンテン系色素(ABPX)」を2010年に開発し、 その固体発光化に向けた基礎研究を推進してきました。今回、cis-ABPX01と命名した有機蛍光色素が、結晶状態で近赤外と青色の異なる二つの発光帯を示す、二重蛍光性をもつことを発見しました。さらに、結晶をすり潰すなどの外的刺激により、近赤外と青色の発光強度を可逆的に変化させることに成功しました。
 人間の目で見ることのできない近赤外光は、様々な物質を透過する性質があり、赤外線通信や非破壊検査、非侵襲診断などで利用されています。今回、開発に成功したcis-ABPX01は、近赤外から青色と大きな蛍光波長のシフトをもつ材料であるため、この特徴を利用して、新たな計測・分析技術へ応用できる可能性があります。例えば、ある材料に近赤外光を示すABPXを混ぜることで、その材料に加わる力や摩耗の程度を簡易にモニタリングできる技術や、これまで難しいとされてきた生体組織や細胞に加わる力を可視化するバイオセンサーへ応用できることが期待されます。

雑誌名:Journal of the American Chemical Society 137, 6436-6439, (2015)
題名:Reversible Near-Infrared/Blue Mechanofluorochromism of Amino-benzopyranoxanthene
著者:Masaru Tanioka, Shinichiro Kamino, Atsuya Muranaka, Yousuke Ooyama, Hiromi Ota, Yoshinao Shirasaki, Jun Horigome, Masashi Ueda, Masanobu Uchiyama, Daisuke Sawada, and Shuichi Enomoto

プレスリリースの詳細はこちらをご覧ください

本研究成果は以下でも紹介されています。
ACS Noteworthy Chemistry
RIKEN RESEARCH

(掲載日:2015年8月10日)
(お問い合わせ:精密有機合成化学分野 神野伸一郎)

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