臨床疫学研究:「肺移植患者における免疫抑制薬の体内動態変動解析とこれに基づく個別投与設計法に関する研究」へのご協力のお願い
1997年1月から2015年3月の入院期間に岡山大学病院(以下、本院)でネオーラル(シクロスポリン)またはプログラフ(タクロリムス)を内服された患者様へ
1.研究の意義と目的
肺移植は重い病気で機能しなくなった患者様の肺を健康な方の肺と入れ替えることで肺の機能を元に戻す治療法です。ヒトには免疫という,身体の外部から異物が侵入するのを防ぐ機能があり,この機能によって移植された肺は異物とみなされ,そのままでは移植された肺が機能しなくなります(拒絶反応)。拒絶反応を防止するためには免疫抑制薬(シクロスポリン,タクロリムス)というお薬を服用する必要がありますが,免疫抑制薬は治療に適切な血液中濃度域(有効血中濃度域)が狭いという特徴があるため,本院では,定期的にこれらお薬の血液中濃度を測定することで免疫抑制薬の副作用や拒絶反応を防止することに努めております。しかし,一般的に免疫抑制薬は個体差が非常に大きく,同じ量を内服しても血液中濃度がばらつきやすいため,患者様によっては,お薬の内服量の調節に難渋する場合があります。これまで,わが国の腎移植や肝移植患者様を対象に免疫抑制薬の血液中濃度が変動する要因が解析されてきておりますが,肺移植患者様においてはほとんど解析されておらず,未だ不明な点が多いのが現状です。
今回の研究では,本院においてシクロスポリンやタクロリムス血液中濃度の測定を実施されました肺移植患者様のデータを解析対象として,これら薬物の血液中濃度が変動する要因を明らかにし,得られた結果に基づいて,個々の患者様に適したシクロスポリンやタクロリムスの投与設計法を検討することを計画致しました。
2.研究の方法
1)研究対象:
1997年1月から2015年3月の入院期間に岡山大学病院呼吸器外科に受診し,シクロスポリンまたはタクロリムスの薬物治療をお受けになられました脳死または生体肺移植患者様のうち,薬物の血液中濃度を測定されている方々を対象と致します。
2)調査期間:
平成22年8月1日から平成27年3月31日まで。
3)研究方法:
上記1)に該当される患者様につきまして,研究者がカルテおよび診療記録を調査して記録収集致します。収集したデータを用いて,統計学的手法によりシクロスポリンまたはタクロリムスの血液中濃度が変動する要因とその大きさを求めた後,これら薬物の血液中濃度の予測式を作成します。また,この予測式の作成に用いなかったデータを対象に,予測式から得られる薬物の血液中濃度の計算値とこれに対応する実測値と比較することで血液中濃度の予測精度も評価します。本研究成果は肺移植を実施された患者様に対し適切かつ効果的な免疫抑制療法を行うための有用な情報となります。
4)調査票等:
研究資料にはカルテおよび診療記録から以下の情報を抽出し使用させていただきます。一連のデータ収集作業は患者様の氏名ではなく,本院受診時に御渡しいたしました患者様のID番号に基づく乱数を利用して実施いたします。更にデータ整理後,このID番号と乱数を関係付ける資料は破棄し,個人を識別できない方法で匿名化いたしますので,患者様の個人情報などが漏洩することはありません。
・ 患者様の生年月日,身長,体重
・ シクロスポリンやタクロリムスの服用履歴
・ シクロスポリンやタクロリムス以外の薬物の同時服用の有無
・ シクロスポリンやタクロリムスの血液中濃度などの検査データ
・ 診察所見,拒絶反応の状態,呼吸器疾患以外の疾患の有無,治療内容
5)情報の保護:
調査・収集した情報は岡山大学薬剤部内で厳重に取り扱います。電子情報の場合はパスワード等で制御されたコンピュータに保存し,その他の情報は施錠可能な保管庫に保存します。なお,本研究成果は個人を特定できない形で関連の学会および学術論文にて発表させていただく予定です。
3.研究組織
研究機関名 | 岡山大学病院 | ||
責任研究者 | 岡山大学病院 薬剤部 | 教授 | 千堂年昭 |
分担研究者 | 岡山大学医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 呼吸器・乳腺内分泌外科科学分野 |
教授 | 三好新一郎 |
岡山大学医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 呼吸器・乳腺内分泌外科科学分野 |
准教授 | 大藤剛宏 | |
岡山大学病院 呼吸器外科 | 助教 | 山根正修 | |
岡山大学病院 薬剤部 | 助教 | 河崎陽一 | |
岡山大学病院 薬剤部 | 薬剤師 | 佐藤智昭 | |
岡山大学病院 薬剤部 | 薬剤師 | 土井原夕貴 | |
岡山大学医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 臨床応用薬学講座 |
准教授 | 合葉哲也 |
4.その他
本研究に御質問等ございましたら,下記までお問い合わせ下さい。本研究や本公告への御対応が御自身で判断できない場合には,御家族様(父母,祖父母,親権者,または成人の子及び兄弟姉妹)が御判断なされても不都合ございません。また,本件につきましてその他御不明な点などがございましたら遠慮なく御連絡下さい。
御自身や御家族の情報が研究に使用されることについて御了承いただけない場合には研究対象としませんので,下記の連絡先までお申出下さい。この場合も診療など病院サービスにおいて患者の皆様に不利益が生じることはありません。
今後の医療の発展のために尽力したいと考えておりますので,何卒御理解・御協力の程よろしくお願い致します。
5.問合せ及び連絡先
氏名:合葉哲也(研究実施担当者)
電話:086-251-7979(直通)
電子メール:taiba@cc.okayama-u.ac.jp
〒700-8530
岡山県岡山市北区津島中1の1の1
TEL 086-251-7979