個別化医療のエキスパートを輩出する Clinical Pharmacokinetics and Therapeutics

臨床薬物動態学

配属案内RESEARCH OPPOrTUNITY

募集の概要

対象 平成25年度薬学部4年次進級予定者

募集人数 最大3名(薬学科を優先し、創薬科学科は最大1名とします)

求める学生像 エビデンスに基づく科学的且つ柔軟な思考ができる学生を求めます。


卒業研究について

配属学生は、3年後の修士論文提出もしくは卒業論文提出(薬学科の場合)を強く意識したテーマについて、大学院生(もしくは6年生)の直接指導のもと、卒業研究を行います。薬学科の学生は、学部同期入学の創薬科学科卒の学生(大学院生)の年次進行と同様に扱います。

卒業研究では、3年次実習とは異なり、実験に先立って入念な実験計画を立案してください。実験計画の立案にあたっては、指導担当の大学院生から実験内容の十分な説明を受け、自らの研究内容をしっかりと理解するところから始めてください。実験計画を入念に策定することは、卒業研究を無理無駄なく効率的に行うために非常に重要なプロセスです。曖昧な点や疑問点は躊躇することなく上級生や私に尋ねてください。

研究の進め方は、大学院生や6年生が都度行う実験報告・研究打ち合わせに参加することで、徐々に学ぶことができます。研究計画や実験結果のディスカッションは教員・上級生の区別なく、対等な意見交換の場として行います。なお、卒業研究は実験計画に従って平日の午前と午後に行ってください。深夜や祝祭日に実験を行うことは得策ではありません。

臨床薬物動態研究室では教育研究の一環として、薬学科および創薬科学科の4年生に、毎年秋に開催される薬学会中国四国支部会における研究成果の発表を課しております。

卒業研究の到達目標

配属学生の初年度到達目標は以下の通りです:

1) 自己の研究分野を理解するために日本語および英語を十分に読解できる。
2) 自己の研究内容を第3者に平易に説明するためのプレゼンテーションができる。
3) 適切にコンピュータ・システムおよびソフトウエアを活用し、実験データを解析できる。
4) 実験データや参考文献を適切に整理し管理することができる。
5) 研究の質を最大限にするような自己時間管理ができる。

研究テーマ

臨床薬物動態学研究室では、薬物療法の最適化ならびに個別化を目的に、薬物の有効性と安全性の向上ならびにこれを保証するための各種製剤機能の新しい評価系の開発や、臨床における医療的な種々の要請に合致する投与計画の構築研究を、病態モデル動物における薬物動態や薬効解析を通じて進めています。現在の主要研究テーマを以下に記します:

  

1) 重篤病症例における薬物至適投与設計−血中濃度変動因子の解明: 患者ひとりひとりに有効かつ安全な薬物療法を提供するためには、それぞれの医療的要請に合致する投与計画を策定することが必要です。重篤病症例では、さまざまな生理機能に著しい変調が生じていることから、薬物体内挙動に著しい変化が生じる場合があります。本研究では、実験的腎不全モデル動物を用い、重症腎不全が薬物動態に与える影響の評価と体内動態の変動メカニズムの解明を目的に系統的な研究を行なっています。(研究テーマ:重症腎不全時における薬物動態の変動性の解析と変動メカニズムの解明およびこれらに基づく薬物の至適投与設計、腎障害時における消化管薬物吸収機構の変調メカニズムの解明)

  

2) 重篤病症例における薬物至適投与設計−感受性の変動メカニズムの解明: 腎不全などの重篤症例では、特に薬物に対する中枢神経系の感受性が亢進し、通常の薬物投与量において過大な薬理効果が発現することが報告されています。こうしたことから病状が重篤な患者に対して薬物療法を施用する場合には感受性亢進に応じて投与量調整が必要となりますが、投与設計の基礎となる感受性の亢進メカニズムについてはほとんど解明されておりません。本研究では、脳機能と深い関係を有する脳組織液の恒常性維持機構に焦点をあて、血液から脳脊髄液を産生している脈絡叢を対象に、その電解質輸送機能を評価するとともに腎不全モデル動物におけるこの輸送機能の変調メカニズムの解析を行っています。(研究テーマ:重症腎不全時における中枢神経系作用薬の作用増強メカニズムの解明)

  

3) 経口投与薬物のアベイラビリティ変動機構の解明とこれに基づく消化管薬物吸収促進技術の開発: 薬物投与量が同一である場合でも、服用後の薬物血中濃度推移にはしばしば大きな個人差は観察されます。この原因のひとつとして消化管における薬物吸収率が患者ひとりひとりで異なることが挙げられますが、薬物吸収にこうした個人差が生じるメカニズムについては未だ不明な点が多く残されています。本研究では、特に消化管吸収率が低いことが知られている抗ウイルス薬を対象に、その消化管吸収メカニズムと消化管吸収率の変動因子を明らかにすると共に、吸収阻害因子を抑制する手法によって薬剤の消化管吸収率を増大する技術開発に取り組んでいます。(研究テーマ:消化管の薬物吸収障壁機能とその機能調節因子の解明とそれに基づく薬物吸収改善手法の開発)

  

4) 臨床薬物速度論に基づくテーラーメード薬物療法の推進: 臨床データの遡及的およびコホート的解析によって、薬物療法の個別化最適化を支援する科学的根拠の蓄積を進めています。加えて、臨床データの理解に必要な仮説を検証する手法として動物実験や分子生物学的実験を用い、また実験事実の臨床的有用性を検証するために臨床データの収集を行います。一見無味乾燥な数字の羅列から貴重なエビデンスを見つけ出す喜びがあります。(研究テーマ:TDMデータに基づく肺移植患者に対する免疫抑制剤の至適投与設計法の開発)

研究業績

研究室配属学生が筆頭著者として報告した論文を紹介します−直近3年間

1) Masuda A, Goto Y, Kurosaki Y, Aiba T. In vivo application of chitosan to facilitate intestinal acyclovir absorption in rats. J Pharm Sci, 2012, 101: 2449-2456.

2) Kusaba J-I, Kajikawa N, Kawasaki H, Kurosaki Y, Aiba T. Comparative study on altered hepatic metabolism of CYP3A substrates in rats with glycerol-induced acute renal failure. Biopharm Drug Dispos, 2012, 33: 22-29.

3) Inoue S, Aiba T, Masaoka Y, Shimizu K, Komori Y, Mio M, Takatori S, Kawasaki H, Kurosaki Y. Pharmacodynamic characterization of nitric oxide-mediated vasodilatory activity in isolated perfused rat mesenteric artery bed. Biol Pharm Bull, 2011, 34: 1487-1492.

4) Ogasawara A, Murakami Y, Yakushiji N, Ohsawa F, Kusaba J, Aiba T, Kurosaki Y, Kakuta H. Pharmacokinetic properties of newly synthesized retinoid X receptor agonists possessing a 6-[N-ethyl-N-(3-alkoxy-4-isopropylphenyl)amino]nicotinic acid skeleton in rats. Drug Dev Ind Pharm, 2011, 37: 1060-1067.

5) Ueshima S, Aiba T, Sato T, Matsunaga H, Kurosaki Y, Ohtsuka Y, Sendo T. Empirical approach for improved estimation of unbound serum concentrations of valproic acid in epileptic infants by considering their physical development. Biol Pharm Bull, 2011, 34: 108-113.

6) Ishikawa A, Kono K, Sakae R, Aiba T, Kawasaki H, Kurosaki Y. Altered electrolyte handling of the choroid plexus in rats with glycerol-induced acute renal failure. Biopharm Drug Dispos, 2010, 31: 455-463.

その他

臨床薬物動態学研究室では、いわゆるコアタイムは設定しておりません。自己時間管理を行って効率的に卒業研究を行ってください。その他、研究室配属や研究内容等、気軽にご相談ください。また、研究室の詳細については、当研究室の配属学生に自由にご相談いただいて構いません。

臨床薬物動態学

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TEL 086-251-7979

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