薬物排出トランスポーターDrug Transporters

マラリア原虫
クロロキン排出トランスポーター (PfCRT)

Plasmodium falciparum chloroquine resistance transporter
PfCRTの再構成系

  PfCRTはマラリア原虫のクロロキン耐性に関わる因子で、この遺伝子に変異が入ることによって原虫はクロロキンに対して耐性になることが知られています。PfCRTは原虫の消化胞と呼ばれる細胞内オルガネラに存在するタンパク質で、クロロキンを食胞から外に排出するトランスポーターであると考えられてきました。しかし、原虫のトランスポーターを単離し、クロロキン輸送活性を測定することは困難でした。
  私たちは大腸菌に大量発現させて精製したPfCRTタンパク質をリポソームに再構成することで輸送活性の測定に成功しました。その結果、野生型のPfCRTはクロロキンを少ししか輸送できませんでしたが、耐性変異を持つPfCRTではクロロキン輸送活性が増大していました。また、PfCRTがH+と薬物の共輸送体であり、多様な薬物を輸送できる薬物輸送トランスポーターであることを見出しました。興味深いことに、PfCRTは薬物だけでなくリジンやアルギニン等のカチオン性のアミノ酸 も輸送することができました。
  マラリア原虫は貪食によってヘモグロビンを消化胞に取り込み分解します。分解によって生じたアミノ酸はマラリア原虫の栄養源として利用されるわけですが、PfCRTはアミノ酸を食胞から細胞質へ運搬する役割を果たしているのではないかと考えています。このような役割を持ったPfCRTに変異が入ることによって、クロロキンを効率的に消化胞から排出できるようになります。

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(参考文献)

         Juge, N., Moriyama, S., Miyaji, T., Kawakami, M., Iwai, H., Fukui, T., Nelson, N., *Omote, H., *Moriyama, Y. (2015) Plasmodium falciparum chloroquine resistance transporter is a H+-coupled polyspecific nutrient and drug exporter.   Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 112, 3356-3361.  

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MATE型薬物排出トランスポーター

Multidrug And Toxin Extrusion (MATE)
サービス名

  MATEは原核生物から高等動物まで広く生物界に存在する薬物排出トランスポーターです。私たちはMATEがヒトなどの哺乳動物にも存在し、腎臓や肝臓からの薬物排出に関わっていることを明らかにしました(参考文献)。腎臓ではカチオン性(陽電荷)の薬物は尿細管細胞の基底膜に存在するOCT(Organic Cation Transporter)によって細胞内に取り込まれ、アピカル膜にあるMATEによってH+と交換輸送することで尿中に排出されます。腎臓刷子縁膜膜小胞を用いた解析からH+と対向輸送を行う薬物排出トランスポーターの存在は知られていましたが、その実態は長らく不明でした。私たちは生物界に広く存在するMATEが哺乳類にも存在するのではないかと考えて遺伝子を解析し、ヒトとマウスがそれぞれ2つのMATE遺伝子を持っていることを明らかにしました。さらに、MATE1のcDNAを導入した強制発現実験からMATE1がH+と様々な薬物を交換輸送するトランスポーターであること、ノザンブロット解析からMATE1は腎臓や肝臓、骨格筋などの様々な組織に発現し、MATE2は腎臓に特異的に発現していることを明らかにしました。また、特異的な抗体を用いた組織化学的な解析からMATEが腎臓尿細管細胞の刷子縁膜(アピカル膜)に局在していることを明らかにしました。ヒトMATEの発見はカチオン性薬物の体内動態を理解する上で鍵となる重要なものです。
  また、マウスを用いた組織化学的な解析から腎臓尿細管細胞や肝細胞に加え、膵臓外分泌菅細胞、膀胱上皮細胞、副腎皮質、ランゲルハンス氏島α細胞、ライディッヒ細胞、甲状腺濾胞細胞、小腸上皮細胞、幽門腺細胞など多くの組織、細胞にMATE1が発現していることを明らかにしています。これらの結果は腎臓特的なMATE2と幅広く分布するMATE1が役割を分担しながら薬物輸送に関わっていることを示しています。また、MATE1への変異導入による輸送機能解析を行い、Glu273が必須な役割を担っていることなどを明らかにしています。

(参考文献)

       Otsuka, M., Matsumoto, T., Morimoto, R., Arioka, S., Omote, H. and *Moriyama , Y (2005) A human transporter protein that mediates the final excretion step for toxic organic cations. Proc. Natl. Acad. Sci USA 102, 17923-17928.

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