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「薬学部」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか。
薬剤師、病院、薬局、くすり、白衣-そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。
もちろん、それは薬学の大切な一面です。しかし、薬学の世界はそれだけではありません。新しい治療法を生み出す研究、体の仕組みを調べる研究、安全な薬を社会に届ける研究など、薬学にはとても広い世界があります。
今回は、岡山大学薬学部で研究と教育に取り組んでいる3名の女性教授に、学部長が話を聞きました。
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薬学に少しでも興味がある高校生の皆さん、理科や科学が好きな小中学生の皆さん、そして保護者の皆様に、薬学の面白さを感じていただければ幸いです。
自身の研究について
学部長:
本日はよろしくお願いします。
まず、先生方がどのような研究をされているのか分かりやすく教えてください。
堀口:
私は、再生医療に関わる研究をしています。再生医療とは、病気やけがで失われた体の働きを、細胞や遺伝子などを使って回復させようとする新しい医療です。
ただ、細胞はとてもデリケートです。普通の薬のように、簡単に作って、保存して、運ぶことはできません。私たちの研究室では、細胞を安定して保存する技術を研究しています。将来、今は治療が難しい病気に対して、新しい細胞治療を届けたいと思っています。
遺伝子治療では、癌や遺伝性疾患の原因となるゲノム配列を直接ターゲットとした薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム)の開発に取り組んでいます。安全で効果的な治療を普及させていくことが薬学研究者の使命だと思っています。
竹内:
私は、心臓や細胞がどのように働いているのかを研究しています。私たちの体は、たくさんの細胞が協力して動いています。たとえば心臓は、休むことなく拍動し続けていますが、その中では電気信号やカルシウムという物質が重要な役割を果たしています。
また、細胞の中にはミトコンドリアという小さな器官があります。ミトコンドリアはエネルギーを作る場所として知られていますが、細胞が元気に働くためにも重要な役割を担っています。
私たちは、実験とコンピューターを使った解析を組み合わせて、体の仕組みをより深く理解しようとしています。
吉田:
私は、薬の安全と信頼を守る研究をしています。薬は、人の命や健康に直接関わるものです。だからこそ、「本当に正しい薬なのか」、「品質に問題はないのか」、「安全に使えるのか」を確認することがとても大切です。
世界には、偽造された薬や、品質に問題のある薬が流通してしまうことがあります。見た目だけでは、本物かどうか分からない場合もあります。
私たちの研究室では、薬の成分や品質を調べる方法を開発したり、薬が安全に社会に届く仕組みについて研究したりしています。薬学は、薬を作るだけでなく、薬を安心して使える社会を守る学問でもあります。
子どもの頃のこと
学部長:
先生方がいつから薬学に興味を持ったのか気になる人も多いと思います。どのような幼少期を過ごしていましたか?
堀口:
子どもの頃は、本を読むのが楽しくて理科も国語も算数も社会も大好きでした。理科の中では宇宙や生命に興味がありました。本や教科書を読み込むことで深く学ぶことは楽しいと感じていました。
そして、中学2年生の時から研究者になりたいと考えており、高校から研究を開始しました。高校時代は生物工学分野、特に遺伝子工学が好きでした。
竹内:
私は、「なぜそうなるのか」を考えることが好きでした。心臓はどうして動き続けるのか、細胞はどうやって情報を伝えているのか。そういった仕組みに興味がありました。
生物はとても複雑ですが、よく調べていくと、そこにはきちんとした仕組みがあります。その仕組みが少しずつ明らかになっていくワクワク感が私の原点であり、今の研究の原動力にもなっています。
吉田:
幼い頃、カゼや腹痛が薬によって楽になった時の感動を今でも覚えています。薬は病気の治療に使われる大切なものです。しかし、薬は正しく作られ、正しく届けられ、正しく使われて初めて人の役に立ちます。
薬と社会のつながりに関心を持つようになったことが、今の研究につながっています。
研究の醍醐味
学部長:
研究をしていて面白いと感じるのはどんな時ですか?
堀口:
世界の医療の常識を変えていく新しい発想を形にできることに喜びを感じています。
私たちの研究室では、これまで不可能と言われてきた、細胞を室温で保存できる新たな技術の開発に成功しています。この技術が社会に広がっていくと、細胞を使った再生医療をより多くの患者さんに届けることができます。
そして、貴重な細胞資源を次世代に残すことができ、災害にも強い細胞バンクを作ることができます。
次々と湧き上がる新しいアイデアで、研究室のメンバーとともに毎日ワクワクしながら再生治療研究を進めています。
竹内:
実験をしていると、予想通りの結果が出ることもあれば、まったく予想外の結果が出ることもあります。実はこの予想外の結果の中に、新しい発見のヒントを見出すこともあります。
また、私たちは実験だけでなく、コンピューターを使って生命現象を考えることもあります。実験で見えた現象を、数式やモデルで説明できるようになると、「なるほど、こういう仕組みだったのか」と分かる瞬間があります。その時こそが研究の醍醐味だと私は思います。
吉田:
薬の世界には、科学だけでなく、社会とのつながりがあります。薬の品質を調べる技術を作ることも大切ですが、その技術が社会で役立つことも大切です。
偽造医薬品や品質に問題のある薬を見つけることができれば、患者さんを守ることにつながります。研究が社会の安全に直接つながるところに、大きな意味を感じています。
薬学部で得られる学び
学部長:
薬学部で学ぶ魅力は、どのようなところにあると思いますか?
堀口:
私は、薬学部で「薬剤学」という分野を教えています。薬が体の中でどのような運命を辿るかを理解する学問です。そして、薬の飲み合わせによる影響を科学的に解き明かし、どうすれば回避できるか学ぶことができます。
この薬学部の専門科目の理解には、高校生までに学んだ化学、生物、物理、そして薬学部で学ぶこれらの応用や生命科学・医療科学が基盤となります。最初は大変に感じるかもしれませんが、それらの知識がつながってくると、薬学の面白さが見えてきます。
新しい治療法を考えること、薬を作ること、薬を適切に届けること。薬学には、未来の医療を支える学びがあります。
竹内:
薬学部の魅力は、体の仕組みから薬の作用まで、幅広く学べることです。たとえば、薬が効く理由を理解するには、細胞の働き、体の仕組み、化学物質の性質など、いろいろな知識が必要です。
生物が好きな人、化学が好きな人、データ解析やコンピューターに興味がある人、医療に関心がある人など、さまざまな興味を持つ人が活躍できる場所だと思います。
吉田:
薬学部では、薬を「作る」だけでなく、「安全に使う」、「社会に正しく届ける」ことも学びます。薬は、人の命に関わるものです。だからこそ、科学的な知識と責任感の両方が必要です。
薬を通じて人や社会を支えたい人にとって、薬学部はとても魅力的な場所だと思います。
研究者・教育者としての目標
学部長:
研究者として、また教育者として、今後どのようなことを実現したいと考えていますか?
堀口:
薬学の強みを生かして、再生医療を多くの患者さんに届く医療にしていきたいです。そのために、細胞や遺伝子を使った治療を、より安全で使いやすいものにする研究を進めています。
研究室の学生さんの多くが博士課程への進学を希望しており、一緒に新しい再生治療法の開発を進めています。皆さんにも新しい医療を支える研究に挑戦する楽しさを感じてほしいです。
竹内:
体の仕組みをより深く理解し、病気の原因や新しい治療法の発見につながる研究を進めたいです。
学生には、「自分の疑問を大切にすること」を伝えたいです。小さな疑問から、大きな研究が始まることがあるので。
吉田:
患者さんが安心して薬を使える社会づくりに貢献したいです。薬の品質や安全を守ることは、医療の信頼を守ることでもあります。
学生には、薬学が社会の課題解決に直接つながる学問であることを知ってほしいと思っています。

薬学部を志す人へのメッセージ
学部長:
最後に、薬学部を目指す高校生、科学に興味のある子どもたち、そして保護者の皆様へメッセージをお願いします。
堀口:
薬学は安全な医療を広く普及させる重要な学問です。新しい治療法を作りたい、人の健康に役立つ仕事がしたいと思う人には、とても魅力的な環境だと思います。
卒業後にも、薬剤師、研究者、製薬企業の研究・開発職、行政に関わる仕事など多くの活躍の場所があります。
竹内:
科学の出発点は、「なぜだろう」と思う気持ちです。その気持ちを大切にしてください。
薬学部には、実験が好きな人、生き物が好きな人、化学が好きな人、数学やコンピューターが好きな人など、いろいろな人が活躍できる場所があります。自分の興味が、将来、誰かの健康を支える研究につながるかもしれません。
吉田:
薬は、人の命と健康に直接関わる大切なものです。だからこそ、薬学には大きな責任があります。
薬学部では、薬を作ることだけでなく、薬を安全に届け、正しく使い、社会を守ることも学びます。薬学を、医療と社会の未来を支える広い学問として見てほしいと思います。
学部長:
本日はありがとうございました。3名の先生方のお話から、薬学には本当に幅広い世界があることが伝わってきました。
薬学は、薬剤師を目指す人だけの学問ではありません。新しい薬を作る研究、体の仕組みを明らかにする研究、安全な薬を社会に届ける研究など、さまざまな道があります。
理科が好きな人、人の役に立つ仕事がしたい人、医療や生命科学に興味がある人にとって、薬学部は大きな可能性を持つ場所です。
皆さんもぜひ、薬学の世界をのぞいてみてください。岡山大学薬学部には、皆さんの好奇心を育て、将来につなげる学びと研究があります。



