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特集
↓ 岡山大学で学ぶデジタル時代の薬学 ↓ 女性教授が語る薬学の魅力と未来

今の薬学は、AI、データサイエンス、コンピューター解析、医療情報など、デジタル技術と深く結びつきながら、大きく変わろうとしています。
・新しい薬の候補を探す
・薬の安全性を予測する
・医療や健康に関するデータから社会の課題を見つける
・偽造医薬品を科学的に見分ける
・細胞や心臓の複雑な働きをコンピューターで理解する
こうした研究は、これからの薬学に欠かせないものになっています。
今回は、岡山大学薬学部でデジタル時代の薬学に関わる研究と教育に取り組む5名の先生に、学部長が話を聞きました。
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薬学に興味のある高校生の皆さん、AIやデータサイエンスに関心のある皆さん、そして保護者の皆様に、これからの薬学の広がりを感じていただければ幸いです。
薬学とデータの関係
学部長:
薬学というと、有機化学や生化学・分子生物学、薬理学・薬剤学・薬物治療学のイメージが強いと思います。なぜ今、薬学にデータやデジタル技術が必要なのでしょうか。
小関:
新しい薬を作るためには、体の中で働くタンパク質や、薬の候補となる分子について理解する必要があります。分子の世界は目に見えないほど小さくて、非常に複雑。そこで、コンピューターを使って分子の形や動きを予測し、薬になりそうな分子を効率よく探す研究が重要になります。
AIや機械学習は、研究者の代わりに答えを出してくれる魔法の道具ではなく、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータの中から研究者が注目すべきヒントを見つけ出してくれる「強力な助手」です。薬学とデータサイエンスが結びつくことで、これまで見つけるのが難しかった新しい薬の候補に近づくことができます。
小野:
薬は人の健康を守るためのものですが、体にとって望ましくない影響を及ぼす可能性もあります。そのため、新しい薬や化学物質を実用化する際には、あらかじめ安全性をしっかりと確かめておくことが欠かせません。
これまでは動物実験が中心でしたが、それには多くの時間と費用がかかります。また近年では、動物愛護の観点からも、できるだけ動物を使わない試験方法が求められるようになりました。そこで重要になっているのが、細胞を使った実験データや化学物質の構造情報をもとに、コンピューターで毒性を予測する方法です。安全性評価の分野でも、データとデジタル技術は大きな力を発揮しています。
小山:
医療の現場や社会には、日々の診療記録や医療費のデータ、公的な統計など、健康に関するさまざまな情報が存在します。これらを丁寧に分析することで、現代の医療が抱える課題を見つけ出し、より良い対策を考えることができます。
薬学は、薬そのものだけを研究する学問ではありません。薬が社会の中でどのように使われ、人々の健康にどう関わっているのかまでを見つめる学問でもあります。そうした視点からも、健康情報を活用するデータサイエンスは、これからの薬学にとって非常に重要な役割を担っていると考えます。
吉田:
薬を安全に使うためには、それが正規品であり品質が確かであることが前提です。また、薬の流通や使用の実態といった社会の動きをデータから把握することも欠かせません。
しかし世界には、外見だけでは見分けがつかない偽造薬や、品質に問題のある薬が出回ってしまうことも。そこで、分析機器やデータ解析によって、成分や品質を正しく見極めることが大切になります。
薬学のデジタル化は、新しい薬を作るためだけではありません。すでに社会にある薬を安全に使い続けるためにも、重要な役割を果たしています。
竹内:
私たちの体の中では、細胞や組織、臓器が複雑に働いています。たとえば、心臓が拍動する仕組みや、細胞内でエネルギーを生み出すミトコンドリアの活動は、驚くほど精密に制御されています。
こうした生命現象を解き明かすには、実験による観察だけでなく、得られたデータをもとに数理モデルを作り、コンピューター上で検証することも重要です。実際の実験とデータ解析を組み合わせることで、複雑な生命現象をより深く捉えることができるようになります。
AI創薬・データ解析がもたらす新薬開発と医療の未来
学部長:
岡山大学薬学部でも、データやコンピューター解析を活用した創薬研究が、実際の成果につながっています。
たとえば私たちの研究グループでは、NO(一酸化窒素)という体内で働く小さな分子に着目し、病気が発症するメカニズムを研究しています。NOは血圧調節や記憶形成に欠かせない重要な分子ですが、過剰になったり働きが乱れたりすると、炎症性のがん、パーキンソン病などの神経変性疾患、さらにはLong COVIDといった病態を引き起こす要因にもなります。
そこで私たちは、解明した病気の仕組みをもとに、コンピューター上で薬の候補を探し出すin silico(バーチャル)スクリーニングを行い、有望な薬物候補を見つけ出しました。さらに、細胞や動物モデルを用いた実験でその効果を検証し、特許取得や論文発表という具体的な成果へと発展させています。
これは、病気の仕組みを解明する基礎研究、AIやデータを駆使した候補化合物の探索、そして実験による実証が一つにつながった事例です。高校生の皆さんには、デジタル技術が単なる計算ツールではなく、新薬の種を発見し、未来の医療を切り拓く大きな力になることを知ってもらいたいと思っています。
小関:
薬の開発では、まず薬の候補となる分子を見つけ出し、それが体内の標的にどのように作用するかを明らかにしていきます。しかし、対象となる分子の数は膨大で、そのすべてを実験だけで確かめることは簡単ではありません。
そこでAIや計算科学を活用すれば、分子の形や性質、動きといったデータをもとに、薬になりそうな候補を効率よく絞り込むことができます。さらに、これまで薬を作ることが難しいと考えられてきた標的に対しても、新しい視点からアプローチできる可能性があります。
小野:
安全性評価の視点においても、AIやデータ解析は、薬の開発をより効率的で安全なものにする力を秘めています。どれほど効果的な候補物質が見つかっても、安全性に問題があれば、実際の薬として使うことはできません。
近年では、これまで見つけることが難しかった毒性の特徴や共通パターンを、AIが発見できるようになってきました。人体では試せないことをデータから予測し、人の健康を守る仕組みを築くことは、研究者にとって大きなやりがいのある挑戦です。
小山:
医療の現場では、薬がどのように使用され、どんな効果や課題があるのかを、実際のデータから考えることができます。たとえば、ある治療がどのような患者さんに使われているのか、医療費や医療資源がどう配分されているかを分析することで、より良い医療のあり方を模索できるのです。
これからの薬学には、薬を創り出すことだけでなく、その薬が社会の中でどう役立っているかをデータに基づいて評価する力も求められています。
吉田:
AIやデータ解析は、医薬品の品質を守る分野でも重要な存在です。たとえば、医薬品の成分や物性を測定したデータを解析することで、本物と偽造品の見極めはもちろん、品質のわずかな違いまで見つけ出すことができます。
医薬品は人の命や健康に直結するもの。だからこそ、科学的なデータに基づいて品質を厳しくチェックし、患者さんが安心して薬を使える社会を守ることが大切だと考えます。
竹内:
病気は一つの分子だけが原因で起こるわけではありません。細胞の中のさまざまな働きが関係し、臓器や体全体の変化として現れます。そのため、生命現象を多面的なデータから捉える視点が欠かせません。
実験で得られたデータを数理モデルに取り入れることで、「体内のどこが変わると発症するのか」「どのポイントを調節すれば治せるのか」をシミュレーションできるようになります。AIやデータ解析は、複雑な生命の仕組みを解き明かし、新たな治療への道筋を見つけ出すための強力なパートナーです。
データサイエンスへの適性
学部長:
データやAIと聞くと「数学やプログラミングが得意でないと難しいのではないか」と不安に思う高校生もいるかもしれません。薬学部でデータサイエンスを学ぶにあたって、最初からそうした分野に強くなければいけないと思いますか?
小関:
最初からそれらが得意である必要はないと思います。大切なのは「薬を作るためにどんなデータが必要か、その情報をどう役立てるか」を考える姿勢。数学やプログラミングは、その目的を果たすための道具にすぎません。
もちろん、学んでいく中で計算やプログラムに触れる場面はあります。しかし、薬学の力で医療の課題を解決したいという興味や探求心さえあれば、必要なスキルは入学後に少しずつ身につけることができますよ。
小野:
毒性や安全性を解明する研究では、化学・生物・データ解析の知識を組み合わせます。もちろん、高校生の段階でこれらすべてに精通している必要はありません。大学に入ってから少しずつ学んでいけば大丈夫!
データサイエンスやAIそのものは他の学部でも学ぶことができますが、薬学部で学ぶ最大の強みは、データが持つ生命科学的な意味を深く理解しながら解析できる点にあります。たとえば安全性評価では、動物や細胞を用いた実験データを扱いますが、それらの数値がどんな実験を経て得られたのか、その変化が人に対する安全性を評価する上でどのような意味をもつのかというところまで見据えて解析します。だからこそ、単なるデータ処理にとどまらず、薬学的な視点で結果を正しく解釈し、新しい解析手法を生み出すことができるのです。
何より大切なのは「どういう結果が出れば、この物質は安全だと言えるのか?」「どうすれば人の健康を守れるのか?」という探求心をもつことです。その疑問を解き明かすための強力な手段として、実験やデータ解析を使いこなしていけばよいのだと思います。
小山:
医療情報を扱う研究では、確かに数字やデータを読む力が求められます。ですが、最初から高度な統計学やプログラミングができる必要はありません。数値が何を意味しているか考えることから始まります。
医療や健康に関心があり、社会の課題をデータから考えてみたいという意欲がある人には、とても興味深くてやりがいのある分野です。専門的な情報科学のスキルは、大学で学ぶ中で少しずつ身につけていけば十分だと思います。
吉田:
医薬品の品質を調べる研究では、分析機器から多くのデータが得られます。それらを正しく読み取る力は大切ですが、最初から難しく考えすぎる必要はありません。
薬学部では、化学の基礎から分析方法、薬の性質、そして社会での使われ方に至るまでを段階的に学びます。そうした日々の積み重ねを通して、データの本質を見抜く目や、科学的な根拠に基づいて判断する力は自然と培われていきます。
竹内:
数学やプログラミングが得意な人は、その強みを薬学の世界で大いに発揮できます。一方で「生物が好き」「実験が好き」「体の仕組みに関心がある」という人も、データサイエンスを学ぶことで研究の視野が一気に広がります。
大切なのは、自分の得意分野だけに留まらず、新しいツールにふれてみる好奇心。薬学部は、実験に打ち込む人もデータ解析に没頭する人も、互いに刺激を与え合いながら成長できる環境です。
「デジタル時代の薬学」を学ぶことで広がる可能性
学部長:
薬学とデータサイエンスの掛け合わせを学ぶことで、将来どのようなキャリアや活躍の場が切り拓かれるのでしょうか?
小関:
AIや計算科学を活用した創薬は、製薬企業、大学、公的研究機関など、さまざまな場所で欠かせないものとなっています。次世代の新薬開発には、実験室での技術にとどまらず、膨大なデータを読み解いて分子を設計する力が求められるからです。
薬学の確かな知識に加えてデータサイエンスも使いこなせる人材は、創薬研究の現場でますます求められるはずです。薬の専門性とデジタル技術をつなぐことができる力は、将来のキャリアにおける非常に大きな武器になります。
小野:
安全性評価やレギュラトリーサイエンスの分野でも、データを活用できる人材は重要です。医薬品や化学物質を誰もが安心して使うためには、科学的なデータに基づいてリスクを正しく見極め、ルールや制度へと落とし込んでいく必要があるからです。
活躍の場は製薬企業や研究機関にとどまらず、安全性を審査する専門機関や行政機関へも大きく広がっています。人の健康を守るため、科学と社会をつなぐ架け橋になりたい人にとって、とてもやりがいのあるフィールドではないでしょうか。
小山:
健康情報科学を学ぶことで、医療や健康に関わるデータを使って社会の課題を考える力が身につきます。この力は、高度先導的薬剤師はもちろん、医療機関、行政、製薬企業、さらには医療情報関連企業や研究機関といった多彩なフィールドで発揮することができます。
これからの医療では、膨大なデータを適切に扱い、その奥にある本質を見極める能力がますます重要になります。薬学の専門知識とデータサイエンスを兼ね備えた人材には無限の可能性が広がっています。
吉田:
医薬品の品質や信頼性を守る仕事は、国内だけでなく国際的にも重要になっています。薬は世界中で流通しており、インターネットを介した不正な取引や偽造薬の広がりなど、新しい課題も生まれているからです。
薬学、分析科学、薬と社会の関わり、データ解析を組み合わせて学ぶことで、患者さんをこうした医薬品リスクから守る仕事への道が開かれます。薬を通じて社会の安全に貢献したい人には意義の大きい分野です。
竹内:
生命現象をデータから理解する力は、基礎研究にも創薬研究にも役立ちます。人体の仕組みを深く理解することは、病気の原因を突き止め、新しい治療法を見出すための第一歩だからです。
薬学部で生命科学とデータサイエンスの双方を習得すれば、将来、研究者をはじめ製薬企業の研究開発職、さらには医療やヘルスケア分野をリードする仕事など、多彩な道が開けると思います。
AI時代を生きる人間に求められる力とは?
学部長:
AIやデータ解析が進化するこの時代、人間の研究者・薬学人に必要な力とは何だと思いますか?
小関:
AIは多くの情報を瞬時に処理できますが、「何を解きたいのか」という問いを立てるのは人間にしかできません。薬を作る研究においても、どの標的に着目するのか、得られた結果をどう解釈するのかは、研究者自身の判断が必要です。AIという強力なツールを使いこなすためにも、土台となる薬学の専門知識と、科学的に考える力が欠かせません。
小野:
安全性評価では、AIやデータが示した結果を鵜呑みにするだけでは不十分です。その結果が人の健康にとってどのような意味をもつのかを深く洞察しなければなりません。薬学が人の命と健康に関わる学問だからこそ、AI時代の今、科学的な判断力や責任感、社会を見つめる広い視野が大切になると考えています。
小山:
データはとても重要ですが、ただ数値を眺めているだけでは医療の課題は見えてきません。その背景にある患者さんの想いや医療現場の実情、社会の仕組みを理解する必要があります。だからこそ人間に求められるのは、データを読み解いた先にある「何を改善すべきか」を考える力です。医療や健康に関わるデータを、人のためにどう生かすかが大切になると思っています。
吉田:
医薬品の信頼性を守るには、科学的なデータに加えて倫理観と社会的責任が必要です。偽造医薬品や不正な流通といった問題は、分析技術だけで解決できるものではないからです。
なぜその問題が起きるのか、どうすれば患者さんの安全を守れるのかという本質を問い直す思考力が求められます。どれほどAI技術が発展しても、人の健康と社会を見つめる視点はいつの時代も決して変わることはありません。
竹内:
生命はとても複雑です。AIや数理モデルは、その複雑な世界を解き明かすための強力なツールですが、導き出された結果をどう解釈し、次にどのような実験をするのかを判断するのは、人間である研究者です。
だからこそ大切なのは、純粋な好奇心を持ち続けること。「なぜだろう?」と思う気持ちこそが、新しい研究の出発点になります。
薬学部を志す人へのメッセージ
学部長:
最後に、薬学、AI、データサイエンスに興味のある高校生と保護者の皆様へメッセージをお願いします。
小関:
薬学は、AIや計算科学と結びつくことで、さらに大きな可能性が広がる学問です。薬を作ることに興味がある人、コンピューターやデータに興味がある人、どちらにも活躍の場がここにはあります。
小野:
薬や化学物質を安全に使うためには科学の力が必要です。人の健康を守りたいと願う皆さんには、新しい薬を創ることだけでなく、安全性評価やレギュラトリーサイエンスという世界にもぜひ目を向けてほしいと思います。
小山:
医療や健康に関わるデータを使って、社会が抱えている課題を考えることは、これからますます重要になります。データサイエンスの力で医療を良くしたい、社会に貢献したいという想いをもつ人にとって、薬学部は最高の挑戦の場になるはずです。
吉田:
薬は人の命と健康に直接関わるものです。だからこそ品質と信頼性を守ることが極めて重要です。薬学には、薬を作るだけでなく、それを安全に社会へ届けるという大切な役割があります。薬学部は知的好奇心と使命感を存分に満たせる魅力的なフィールドです。
竹内:
科学の出発点は「なぜだろう」という小さな疑問です。生物や実験が好きな人、数学やデータに興味がある人、医療に関心がある人、それぞれの探求心が薬学という学問の中でつながっていきます。
学部長:
本日はありがとうございました。5名の先生方のお話から、薬学がデジタル技術やデータサイエンスと深く結びつきながら、新しい時代へ進んでいることがよく分かりました。
AIやデータサイエンスが発展する今だからこそ、薬学を学ぶ価値は一層高まっています。岡山大学薬学部では、従来の薬学の力にデジタル技術を融合させ、未来の医療と社会を支える人材の育成を目指しています。
薬学に興味のある方はもちろん、AIやデータ活用に関心がある方、人の健康や社会に貢献したい方。ぜひ岡山大学薬学部で、広がり続ける薬学の可能性にふれてみてください。

「薬学部」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか。
薬剤師、病院、薬局、くすり、白衣-そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。
もちろん、それは薬学の大切な一面です。しかし、薬学の世界はそれだけではありません。新しい治療法を生み出す研究、体の仕組みを調べる研究、安全な薬を社会に届ける研究など、薬学にはとても広い世界があります。
今回は、岡山大学薬学部で研究と教育に取り組んでいる3名の女性教授に、学部長が話を聞きました。
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薬学に少しでも興味がある高校生の皆さん、理科や科学が好きな小中学生の皆さん、そして保護者の皆様に、薬学の面白さを感じていただければ幸いです。
自身の研究について
学部長:
本日はよろしくお願いします。
まず、先生方がどのような研究をされているのか分かりやすく教えてください。
堀口:
私は、再生医療に関わる研究をしています。再生医療とは、病気やけがで失われた体の働きを、細胞や遺伝子などを使って回復させようとする新しい医療です。
ただ、細胞はとてもデリケートです。普通の薬のように、簡単に作って、保存して、運ぶことはできません。私たちの研究室では、細胞を安定して保存する技術を研究しています。将来、今は治療が難しい病気に対して、新しい細胞治療を届けたいと思っています。
遺伝子治療では、癌や遺伝性疾患の原因となるゲノム配列を直接ターゲットとした薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム)の開発に取り組んでいます。安全で効果的な治療を普及させていくことが薬学研究者の使命だと思っています。
竹内:
私は、心臓や細胞がどのように働いているのかを研究しています。私たちの体は、たくさんの細胞が協力して動いています。たとえば心臓は、休むことなく拍動し続けていますが、その中では電気信号やカルシウムという物質が重要な役割を果たしています。
また、細胞の中にはミトコンドリアという小さな器官があります。ミトコンドリアはエネルギーを作る場所として知られていますが、細胞が元気に働くためにも重要な役割を担っています。
私たちは、実験とコンピューターを使った解析を組み合わせて、体の仕組みをより深く理解しようとしています。
吉田:
私は、薬の安全と信頼を守る研究をしています。薬は、人の命や健康に直接関わるものです。だからこそ、「本当に正しい薬なのか」、「品質に問題はないのか」、「安全に使えるのか」を確認することがとても大切です。
世界には、偽造された薬や、品質に問題のある薬が流通してしまうことがあります。見た目だけでは、本物かどうか分からない場合もあります。
私たちの研究室では、薬の成分や品質を調べる方法を開発したり、薬が安全に社会に届く仕組みについて研究したりしています。薬学は、薬を作るだけでなく、薬を安心して使える社会を守る学問でもあります。
子どもの頃のこと
学部長:
先生方がいつから薬学に興味を持ったのか気になる人も多いと思います。どのような幼少期を過ごしていましたか?
堀口:
子どもの頃は、本を読むのが楽しくて理科も国語も算数も社会も大好きでした。理科の中では宇宙や生命に興味がありました。本や教科書を読み込むことで深く学ぶことは楽しいと感じていました。
そして、中学2年生の時から研究者になりたいと考えており、高校から研究を開始しました。高校時代は生物工学分野、特に遺伝子工学が好きでした。
竹内:
私は、「なぜそうなるのか」を考えることが好きでした。心臓はどうして動き続けるのか、細胞はどうやって情報を伝えているのか。そういった仕組みに興味がありました。
生物はとても複雑ですが、よく調べていくと、そこにはきちんとした仕組みがあります。その仕組みが少しずつ明らかになっていくワクワク感が私の原点であり、今の研究の原動力にもなっています。
吉田:
幼い頃、カゼや腹痛が薬によって楽になった時の感動を今でも覚えています。薬は病気の治療に使われる大切なものです。しかし、薬は正しく作られ、正しく届けられ、正しく使われて初めて人の役に立ちます。
薬と社会のつながりに関心を持つようになったことが、今の研究につながっています。
研究の醍醐味
学部長:
研究をしていて面白いと感じるのはどんな時ですか?
堀口:
世界の医療の常識を変えていく新しい発想を形にできることに喜びを感じています。
私たちの研究室では、これまで不可能と言われてきた、細胞を室温で保存できる新たな技術の開発に成功しています。この技術が社会に広がっていくと、細胞を使った再生医療をより多くの患者さんに届けることができます。
そして、貴重な細胞資源を次世代に残すことができ、災害にも強い細胞バンクを作ることができます。
次々と湧き上がる新しいアイデアで、研究室のメンバーとともに毎日ワクワクしながら再生治療研究を進めています。
竹内:
実験をしていると、予想通りの結果が出ることもあれば、まったく予想外の結果が出ることもあります。実はこの予想外の結果の中に、新しい発見のヒントを見出すこともあります。
また、私たちは実験だけでなく、コンピューターを使って生命現象を考えることもあります。実験で見えた現象を、数式やモデルで説明できるようになると、「なるほど、こういう仕組みだったのか」と分かる瞬間があります。その時こそが研究の醍醐味だと私は思います。
吉田:
薬の世界には、科学だけでなく、社会とのつながりがあります。薬の品質を調べる技術を作ることも大切ですが、その技術が社会で役立つことも大切です。
偽造医薬品や品質に問題のある薬を見つけることができれば、患者さんを守ることにつながります。研究が社会の安全に直接つながるところに、大きな意味を感じています。
薬学部で得られる学び
学部長:
薬学部で学ぶ魅力は、どのようなところにあると思いますか?
堀口:
私は、薬学部で「薬剤学」という分野を教えています。薬が体の中でどのような運命を辿るかを理解する学問です。そして、薬の飲み合わせによる影響を科学的に解き明かし、どうすれば回避できるか学ぶことができます。
この薬学部の専門科目の理解には、高校生までに学んだ化学、生物、物理、そして薬学部で学ぶこれらの応用や生命科学・医療科学が基盤となります。最初は大変に感じるかもしれませんが、それらの知識がつながってくると、薬学の面白さが見えてきます。
新しい治療法を考えること、薬を作ること、薬を適切に届けること。薬学には、未来の医療を支える学びがあります。
竹内:
薬学部の魅力は、体の仕組みから薬の作用まで、幅広く学べることです。たとえば、薬が効く理由を理解するには、細胞の働き、体の仕組み、化学物質の性質など、いろいろな知識が必要です。
生物が好きな人、化学が好きな人、データ解析やコンピューターに興味がある人、医療に関心がある人など、さまざまな興味を持つ人が活躍できる場所だと思います。
吉田:
薬学部では、薬を「作る」だけでなく、「安全に使う」、「社会に正しく届ける」ことも学びます。薬は、人の命に関わるものです。だからこそ、科学的な知識と責任感の両方が必要です。
薬を通じて人や社会を支えたい人にとって、薬学部はとても魅力的な場所だと思います。
研究者・教育者としての目標
学部長:
研究者として、また教育者として、今後どのようなことを実現したいと考えていますか?
堀口:
薬学の強みを生かして、再生医療を多くの患者さんに届く医療にしていきたいです。そのために、細胞や遺伝子を使った治療を、より安全で使いやすいものにする研究を進めています。
研究室の学生さんの多くが博士課程への進学を希望しており、一緒に新しい再生治療法の開発を進めています。皆さんにも新しい医療を支える研究に挑戦する楽しさを感じてほしいです。
竹内:
体の仕組みをより深く理解し、病気の原因や新しい治療法の発見につながる研究を進めたいです。
学生には、「自分の疑問を大切にすること」を伝えたいです。小さな疑問から、大きな研究が始まることがあるので。
吉田:
患者さんが安心して薬を使える社会づくりに貢献したいです。薬の品質や安全を守ることは、医療の信頼を守ることでもあります。
学生には、薬学が社会の課題解決に直接つながる学問であることを知ってほしいと思っています。

薬学部を志す人へのメッセージ
学部長:
最後に、薬学部を目指す高校生、科学に興味のある子どもたち、そして保護者の皆様へメッセージをお願いします。
堀口:
薬学は安全な医療を広く普及させる重要な学問です。新しい治療法を作りたい、人の健康に役立つ仕事がしたいと思う人には、とても魅力的な環境だと思います。
卒業後にも、薬剤師、研究者、製薬企業の研究・開発職、行政に関わる仕事など多くの活躍の場所があります。
竹内:
科学の出発点は、「なぜだろう」と思う気持ちです。その気持ちを大切にしてください。
薬学部には、実験が好きな人、生き物が好きな人、化学が好きな人、数学やコンピューターが好きな人など、いろいろな人が活躍できる場所があります。自分の興味が、将来、誰かの健康を支える研究につながるかもしれません。
吉田:
薬は、人の命と健康に直接関わる大切なものです。だからこそ、薬学には大きな責任があります。
薬学部では、薬を作ることだけでなく、薬を安全に届け、正しく使い、社会を守ることも学びます。薬学を、医療と社会の未来を支える広い学問として見てほしいと思います。
学部長:
本日はありがとうございました。3名の先生方のお話から、薬学には本当に幅広い世界があることが伝わってきました。
薬学は、薬剤師を目指す人だけの学問ではありません。新しい薬を作る研究、体の仕組みを明らかにする研究、安全な薬を社会に届ける研究など、さまざまな道があります。
理科が好きな人、人の役に立つ仕事がしたい人、医療や生命科学に興味がある人にとって、薬学部は大きな可能性を持つ場所です。
皆さんもぜひ、薬学の世界をのぞいてみてください。岡山大学薬学部には、皆さんの好奇心を育て、将来につなげる学びと研究があります。









