細胞外ATPによる樹状細胞の活性化メカニズムを解明

2023.03.09

分子生物学分野の古田和幸准教授、垣内力教授らの研究グループは、細胞外ATPによる樹状細胞の活性化とそのメカニズムを明らかとしました。
アデノシン三リン酸(ATP)は細胞内のエネルギー分子としての役割がよく知られていますが、近年では、炎症部位や腫瘍組織内などで細胞外に放出され、高濃度の細胞外ATPが炎症応答や免疫応答を誘導することも知られています。樹状細胞は免疫応答において病原体や腫瘍細胞を取り込み、T細胞に提示することで、病原体や腫瘍細胞排除のための免疫応答を開始する役割があります。これまで細胞外ATPは樹状細胞にも作用すると考えられていましたが、ATPによって樹状細胞がどのように影響を受けるかは不明でした。本研究では、高濃度のATPが、抗原提示を活性化する分子であるMHC分子の細胞表面への発現を上昇させることを見出し、さらにそのメカニズムとして、ATPとその代謝物であるアデノシンが協調して樹状細胞に作用することで、MHC分子の発現を上昇させることを明らかとしました。また、ATPによって活性化された樹状細胞は、IFN-γ(インターフェロンガンマ)を産生するT細胞の活性化を強く誘導することが明らかとなりました。IFN-γは抗腫瘍免疫に重要な役割を持つことが知られており、ATPを介した樹状細胞の活性化は、腫瘍免疫の活性化機構である可能性が考えられました。
本研究成果は2023年3月6日に米国の科学誌「The Journal of Biological Chemistry」のオンラインサイトに掲載されました。

本研究は,科学研究費補助金、小柳財団、鈴木謙三記念医科学応用研究財団、武田科学振興財団などの助成を受けて、京都薬科大学との共同研究にて行われたものです。

雑誌名:The Journal of Biological Chemistry
リンク:https://doi.org/10.1016/j.jbc.2023.104587
題 名:ATP and its metabolite adenosine cooperatively upregulate the antigen-presenting molecules on dendritic cells leading to IFN-γ production by T cells
著 者:Kazuyuki Furuta*, Hiroka Onishi, Yuki Ikada, Kento Masaki, Satoshi Tanaka, Chikara Kaito (*: Corresponding author)

(お問い合わせ:分子生物学分野 古田和幸)

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