研究室

生体膜機能生化学[研究者の方向け]

主な研究テーマ

トランスポーターの生化学

  1. 化学伝達に関わるトランスポーターの同定とその構造・機能・制御
  2. 薬物排出に関わるトランスポータ−の同定とその構造・機能・制御

研究の概要

任意のトランスポーターを活性を保持したままで大量に純粋に調製し、その機能を自在に測定する方法を確立しました。これをin vitro reconstitutionないし構成的手法となづけました。この方法を用いて、情報伝達に必要なトランスポーターや薬物や代謝物の排出に必要なトランスポーターを続々発見しています。記憶や思考に必須のグルタミン酸トランスポーターやアスパラギン酸トランスポーター、痛み伝達や感覚受容に必要なATPトランスポーター、痛風の原因物質尿酸を排出するトランスポーター、薬品にもなるアルカロイドを輸送するトランスポーターなどなど。これらのトランスポーターの発見により、化学伝達や薬物動態の全貌が把握できるようになってきました。私たちの研究室において豊富に供給するトランスポータータンパク質は医薬品開発のための残されたそして手つかずの標的です。

最近の成果

飢餓がてんかん発作に有効なことは旧約聖書の時代からわかっていましたが、その機構は不明でした。最近、この仕組みを解き明かす事に成功しました。この成果も in vitro reconstitution法によりふんだんに純粋なトランスポーターを用いる事ができたためです。すなわち、神経のシナプス小胞に存在する小胞型グルタミン酸トランスポーター (VGLUT)の活性が塩素イオンとケトン体により制御されることを見つけました。VGLUT分子上にグルタミン酸輸送活性をオン・オフするテレビのスイッチのようなものがあります。通常このスイッチは塩素イオンによりオン状態となっていますが、ケトン体がこのスイッチに結合するとオフになってしまいます。飢餓により増加したケトン体が、VGLUT活性を阻害し、小胞内のグルタミン酸濃度が低下することで、神経からのグルタミン酸放出が抑えられ、てんかん発作(脳の過剰興奮)が抑えられます。つまり、ケトン体はグルタミン酸による過剰な興奮を元から絶っているのです。この発見により、VGLUTが新たな抗てんかん薬の標的として位置づけられます。しかし、それ以外にも大きな意味がありそうです。すなわち、この成果により、代謝が脳機能を直接支えていること、つまり、心が栄養状態の鏡だということを物質レベルで証明できたということです。歴史的に飢餓はありふれたものであり、興奮性化学伝達を抑える仕組みはこれまで何度となく発動されてきたに違いありません。この仕組み(スイッチ)が私たちの体に埋め込まれているという事実は、我々の社会の成り立ちを考える上で何らかの意味があると思われます。 このようにトランスポーターと対話することで未知の世界が広がります。
詳しくはこちらを参照してください。

最近の主な発表論文

  1. 森山芳則 (2009) 蛋白質・核酸・酵素 54, 148-155.
  2. 森山芳則 (2010) http://first.lifesciencedb.jp/archives/1197
  3. Juge, N., Muroyama, A., Hiasa, M., Omote, H., and Moriyama, Y. (2009). J. Biol. Chem. 284, 35073-35078.Sawada, K., Echigo, N., Juge, N., Miyaji, T., Otsuka, M., Omote, H., Yamamoto, A., and Moriyama, Y. (2008) Proc. Natl Acad. Sci. USA 105, 5683-5686. Comment in:Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Apr 22;105(16):5949-50. Auton Neurosci. 2009 Oct 5;150(1-2):1-4.
  4. Miyaji, T., Echigo, N., Hiasa, M., Senoh, S., Omote, H., and Moriyama, Y. (2008). Proc. Natl Acad. Sci. USA 105, 11720-11724.
  5. Iharada, M., Miyaji, T., Fujimoto, T., Hiasa, M., Anzai, N., Omote, H., and Moriyama, Y. (2010) J. Biol. Chem. 285, 26107-26113.
  6. Juge, N., Gray, J.A., Omote, H., Miyaji, T., Inoue, T., hara, C., Ueyama, H., Edwards, R.H., Nocoll, R.A., and Moriyama Y. (2010) Neuron 68, 99-112.  Comment by Jahn, R. (2010) Neuron 68, 6-8.
  7. Leviatan, S., Sawada, K., Moriyama, Y., Nelson, N. (2010) J. Biol. Chem. 285, 23548-23556.

教員紹介

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森山 芳則
Yoshinori MORIYAMA
専門分野 生化学
所属学会 日本生化学会

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