学生生活
campus life
インタビュー
学部生
わからないを楽しみに
創薬科学科3年 酒井 健晴
1、2年生は化学・生物・物理をベースとして、薬について様々な視点から学びます。講義ではわからない点が沢山出てきますが、友人との教え合いや、先生方への質問を通して理解を深めることができます。3年生になって実習が始まると、実験操作の意味がこれまでの学びと結びつき、より面白さを感じることができます。また、私が岡山大学薬学部の特色のある講義として挙げたいのが「薬学研究入門」です。早い段階で研究を体験することができ、研究室の先生や先輩方から貴重なお話を聞くこともでき、自分の将来を深く考える良い機会となりました。これからの学生生活では、より多くの「わからない」に出会うことと思いますが、それら1つ1つを「楽しむ」という気持ちで、学びを深めていきたいです。
なりたい自分になるために
薬学科4年 宮地 凛
私は薬剤師として医療現場で患者さんを支えることと、薬学研究者として新たな知見を創出し医療の発展に貢献することの両方に魅力を感じ、岡山大学薬学部に入学しました。学部4年生になり、これまで学んだ基礎知識をもとに、より専門的な知識を学び始めたとともに、研究室活動も始まり、毎日新たな学びの連続です。4年次後期から5年次にかけては実務実習も始まるため、医療現場を実際に体験することで、自身の将来像をより具体的に考える時期が近づいていると感じています。今でも将来に対する不安や迷いはありますが、薬学部で学べる全てのことを大切にし、どの進路を選んでも自信をもって薬学に携わることができる人材を目指したいと考えています。
多様な経験を糧に、一生モノの専門性を掴む
創薬科学科4年 的馬 知花
3年次には座学の枠を超え、4月から11月にかけて長期の実習が行われます。実習ではマウスを用いた生体実験や分光光度計による分析など、研究室配属後には経験しにくい幅広い分野の実験に触れ、今まで学んだ知識を深く定着させることができました。また、11月の研究室配属に向けて、各研究室の訪問や、実習で先輩との交流を通して、自分の将来をじっくり考える貴重な期間となります。12月から希望の研究室へ配属された後は、創薬科の「研究に専念できるカリキュラム」を最大限に活用し、より専門的な研究に没頭しています。これらの活動で得た高度な技能を糧に、自分の夢を確実に掴み取れるよう、これからも日々の研究に励んでいきたいです。
一つ一つの経験を大切に
薬学科5年 長尾 修志
薬局・病院における実務実習や症例を用いたディスカッションなど、学年が進むにつれて実践的な学びの機会が増えてきました。これまでの座学で身につけてきた薬学の知識を実際の場面で応用できるようになり、その楽しさや手応えを実感しています。また、研究室での研究活動にも取り組んでいます。私は細胞を用いて慢性腎臓病に関する研究を行っていますが、仮説通りに結果が得られないという課題に直面しています。実験条件を細かく見直しながら原因を検討していく中で、論理的思考力や課題解決力が身についてきたと感じています。これからも薬剤師という目標の実現に向けて、一つ一つの経験を大切にしながら、学びを着実に積み重ねていきたいと考えています。
臨床へつながる学び
薬学科6年 中谷 真緒
薬学科6年次は、薬剤師国家試験の勉強や就職活動、卒業論文の作成など、これまでの学びを総括する大切な時期です。講義での単位はこれまでの年次でほとんど取得しているため、平日は毎日研究室に通い、卒業論文発表に向けて研究に取り組んでいます。研究室では、友人と励まし合いながら、充実した研究室生活を送ることができています。また、4~5年次の薬局・病院実習を通して、座学で得た知識が実務に結びつくことを実感するとともに、医療の課題についても学びました。これらの経験を生かし、将来は患者様と直接関わることのできる臨床の場で、薬剤師として活躍したいと考えています。
大学院生
試行錯誤を通して得る学び
大学院博士前期課程1年 玄馬 久里愛
抗菌薬を過剰に使用することは薬剤耐性菌の発生を招き、世界的な課題となっています。日本でも厚生労働省のアクションプランのもと適正使用が推進されています。私は、抗菌薬の処方率や使用クラスの内訳について、ビッグデータを用いて解析し、その影響を検討しています。解析では臨床における実態との乖離を避けるよう条件設定を工夫し、医師の協力のもとで現場の視点についても学んでいます。また、1つのデータベースのみならず、複数のデータベースを扱いながら疫学への理解を深めています。学生のうちから色々なデータベースに触れるという貴重な経験を将来に活かせるよう、日々試行錯誤しながら研究に取り組んでいます。
魅力的な研究者になるために
大学院博士後期課程1年 山口 咲季
植物バイオマスを用いて細菌に有用な物質を産生させる手法は、環境負荷の低い物質生産方法として注目されています。そこで、私は植物環境における大腸菌の増殖に関与する遺伝子の同定と、その機能解析をテーマとして研究を行っています。植物バイオマス上での増殖に適応した大腸菌を作製することで、物質生産の高効率化を目指しています。「実験で得られたデータと向き合い、仮説をたて、検証する」という一連の過程を楽しみながら、日々の研究に取り組んでいます。大学院での研究を通じて多様な実験手法や考え方を学び、研究課題に対して柔軟にアプローチできる研究者になりたいです。
研究を通して成長していく
大学院博士前期課程2年 𠮷田 尚生
現在、私は光によってトランスポーターの活性を制御する研究を行っています。
研究室に配属されてから1年以上が経過しましたが、研究活動を通して、私自身がいかに未熟であるかを痛感しています。
例えば、私はより筋道を立てて考えながら研究をする必要性があると感じています。どのような実験が必要か、実験結果から何がわかるかなどを論理的に考えながら研究を行うことが着実に研究目標に近づいていくために不可欠だと思いました。
研究室生活では、上記以外にも私自身の課題が多く発見できています。それらを改善しながら日々成長していきたいです。
てんかん治療新薬の開発へ
大学院博士後期課程2年 文 豪
てんかんとは慢性脳疾患の一種で、異常な脳内電気活動によりてんかん発作が生じます。既存の抗てんかん薬が効かない難治性てんかんに対し、ケトン食療法という食事療法が有効です。そこで私は、ケトン食時に体内で産生される物質に注目しました。これらケトン食由来代謝産物の神経作用を解明出来れば、てんかんの病因解明と治療に繋がると思います。研究では、不撓不屈の精神が重要です。失敗から次へ進むことで、私の心身ともに成長していると思います。
環境化学物質の作用を読み解く
大学院博士後期課程2年 伊藤 嘉崇
私は薬学部の講義を通して、医薬品を含む化学物質を安全・適切に使用するには、その毒性や健康リスクの把握が重要であることを学びました。一方、環境中には農薬など、人への影響が十分に明らかでない化学物質も存在します。この現状に着目し、大学院では、環境化学物質への曝露が引き起こす細胞応答を遺伝子レベルで解析し、その仕組みを解明することを目指して研究しています。研究は、仮説を立てて実験し、結果に応じて仮説を再考することの繰り返しです。試行錯誤の毎日ですが、様々な研究者と議論を重ね、未知の生命現象に迫っていく過程に、研究の楽しさを感じています。将来は、研究で磨いた仮説検証力を活かし、人の健康課題の解決に貢献したいです。
新たな薬剤耐性メカニズムの探索
大学院博士後期課程3年 白川 璃子
これまでに知られている薬剤耐性菌の多くは、細菌が薬剤を分解する酵素や薬剤排出ポンプをコードした外来遺伝子を獲得することによって耐性化するといわれています。一方で、自身の遺伝子欠損による耐性化はこれまであまり知られていませんでした。そこで私は、ヒト免疫にも用いられている亜鉛に対して耐性を示した遺伝子欠損株について、耐性化メカニズムの研究を行っています。得られた実験データから遺伝子の新しい生理的役割が見えてきたり、亜鉛豊富な環境下で実際にその遺伝子欠損株が存在するのかなどと思考を巡らせたりして、研究の楽しさを感じています。新たな薬剤耐性メカニズムを解明できることを期待しながら、日々実験に励んでいます。
臨床の課題を創薬の力で解決する
大学院博士課程1年 山本 凌吾
私は、臨床と研究の両方を深く学べる岡山大学薬学部での6年間を通じて、医療の最前線にある知識や課題を学んできました。特に病院実習では、薬剤耐性菌という既存の抗生物質が効かない感染症に対して治療の選択肢が制限される現状を目の当たりにし、より有効な薬物治療が必要だと感じました。そこで、学部を卒業し薬剤師免許を取得した現在は、博士課程にて薬剤耐性菌に対する新規抗生物質を開発する研究に従事しています。将来的には、薬剤師としての臨床的視点を創薬研究に活かしながら、世界中の患者さんに新薬を届ける架け橋となりたいと考えています。
研究能力を持つ薬剤師を目指して
大学院博士課程3年 岡 佑里恵
私は、岡山大学病院で薬剤師として働きながら、博士課程に進学しています。5年次の実務実習で臨床と研究が密接に関連していることを実感し、さらに卒業研究を通じて研究の奥深さを知ったことで、これらを両立するという進路を選びました。現在は、がんにおけるトランスポーターの発現意義に関して研究しています。
研究は試行錯誤を繰り返すので大変なことが多いですが、結果が出た時には達成感があり、さらに未知のことを明らかにしたいという気持ちになります。研究活動を通じて高い問題解決能力を身につけることで、臨床現場における課題に向き合い、より良い医療の提供に貢献できる薬剤師を目指して、邁進していきたいと思っています。
卒業生
医療に新たな価値を生み出せる薬剤師を目指して
岡山大学病院 薬剤部(令和3年卒) 河井 花菜子
私は、岡山大学病院で薬剤師として勤務しています。薬剤師という立場から、目の前の患者さんにとって最適な薬物治療を提供できるよう、医師や看護師など多職種と連携しながら日々の業務に取り組んでいます。特にがん薬物療法に関わる患者さんや、栄養管理が必要な患者さんに対して、処方内容の確認や副作用の評価、服薬指導に加え、栄養剤の選択や投与方法の提案などにも関わっています。チーム医療の一員として、治療方針の検討に参画できる点に責任とやりがいを感じています。
学生時代には、保険薬局もしくは病院のいずれを志望するかで悩んだ時期もありました。しかし、病院実務実習を通じて、病院薬剤師が大学で学んだ薬物動態学などの専門的知識を活かしながら処方内容を評価し、他職種や患者さんからの質問に答え、頼りにされている姿を目の当たりにしました。さらに、日々の臨床で得られた疑問を研究へと発展させている点にも大きな魅力を感じました。これらの経験から、単に知識を提供するだけでなく、状況に応じて考え、判断し、医療に新たな価値を生み出せる病院薬剤師になりたいと考えるようになり、現在に至っています。
現在は大学病院という恵まれた環境の中で、先輩方のサポートを受けながら、日々の臨床に加えて資格取得や研究にも取り組んでいます。薬剤師という資格は、医療現場にとどまらず、多様な分野で活躍できる可能性があります。さらに、自身のライフスタイルに合わせて働き方を選択できる点も大きな魅力の一つです。進路に迷うこともあると思いますが、視野を広く持ち、自分の可能性を大切にしてほしいと思います。
研究の面白さに惹かれて
日本新薬株式会社 製薬化学研究部(令和5年卒) 高村 祐太
私は現在、日本新薬株式会社の製薬化学研究部に所属し、医薬品原薬の製造プロセス開発に携わっています。研究室レベルで見出された合成ルートを、より効率的で安全かつ安定した製造方法へと発展させ、医薬品を確実に患者さんのもとへ届けるための重要な役割を担っています。研究成果を実際の医薬品製造へとつなげていく責任ある業務に、大きなやりがいを感じています。
私が岡山大学薬学部に進学した理由は、「薬を創るって格好良くない?」という漠然とした憧れのようなものでした。そんな思いを持って入学したものの、学部時代は部活動に没頭するあまり、決して成績の良い学生とは言えませんでした。しかし研究室に配属され研究に取り組む中で、「課題を立て、それをどのように証明して解決するか」を考える研究の過程に魅力を感じるようになりました。すなわち、証明の仕方は人それぞれであり、そこにオリジナリティが生まれることが研究の面白さであり難しさだと感じています。また、そのオリジナリティは、課題へのアプローチの仕方や実験の進め方など、経験を通じて研究に対する引き出しを増やしていくことで育まれていくものだと感じています。私は、学位研究として有機合成から細胞・動物実験まで幅広い研究を経験することができたことに加えて、多くの分野の先生方と議論する機会に恵まれました。こうした経験は、研究職に就いた私にとって財産であり、研究活動の基盤となっています。研究者としてはまだまだ未熟者ですが、岡山大学で培った土台から、さらにオリジナリティを発展させられる研究者になることが、今の私の目標です。
薬学部での学びは幅広く、私のように入学時点で明確な目標が定まっていなくても、日々の講義や研究活動の中で将来の方向性が見えてくると思います。皆さんが岡山大学薬学部で多くの経験を積み、「面白い」と思える進路を見つけていかれることを願っています。
自分の可能性を広げる
アステラス製薬株式会社 開発本部 日本アジア臨床開発(平成30年卒) 山﨑 真菜
「目の前にいる人だけでなく、地球の裏側で苦しんでいる人にも薬を届けたい。」そう思い、製薬企業で働くことを選びました。現在は都内で臨床開発職として働いています。臨床開発職は、薬の候補となる化合物について、臨床試験(治験)を通じて有効性と安全性を評価・検証するという、医薬品開発の最終段階を担います。社内ではまだまだ若手ですが、責任ある業務を担当し、周りの助けを得ながら、1日でも早く薬を患者さんに届けられるよう、やりがいを持って日々業務に邁進しています。 薬学部に入学すると、「薬剤師(もしくは研究者)になる」と考えている人が多いと思いますが(私もその内の一人でした)、病院や製薬企業だけでなく、医療機器メーカーや公務員など、患者さんに貢献できる活動の場は様々です。広く世の中に貢献するという意味では、さらに多くの選択肢があります。私の同期でも、自分の信念を貫き動物医薬品や介護の分野に就職した人もいます。 私は大学5年生時の病院・薬局実習を経て、このまま薬剤師として働くことに迷いを感じ、休学を決め、海外留学やバックパッカーを経験しました。この経験が視野や見分を広げ、「世界中の人に貢献したい」という今の会社を選んだ理由にも繋がっています。 岡山大学の薬学部に入学されたら、是非自分のやりたいことに一生懸命取り組んでください。やりたいことが見つからない人、私のように迷っている人も、枠にはまることなく少し回りを見渡せば、興味のあることや自分が本当にやりたいことが見えてくるはずです。学生のやりたいことをサポートする環境が、岡山大学の薬学部には整っています。私が前述のように自由な大学生活を過ごせたのも、教授の方々や大学のサポートがあってのことです。大学生という一生に一度の機会を最大限に生かし、自分の可能性を広げていってください。
幅広い分野で薬学を活かす
厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課(平成28年卒) 鈴木 珠季
私が6年制の薬学部を選んだのは、生物や化学が好き、医薬品に興味がある、医療関係の仕事に興味がある、資格を持ちたいといった理由からで、大学入学時は、病院や薬局の薬剤師として働くことを考えていました。しかし、大学で学ぶ中で、薬剤師以外にも製薬企業や公務員など幅広く選択肢があることを知り、周囲からの勧めなどをきっかけに厚生労働省に就職しました。主に薬事や食品の分野に携わる薬系技官として働いています。 これまで、入省後2年間は新薬の承認審査に関わる部署で働き、その後内閣官房に出向し様々な省庁からの出向者とともに日本の成長戦略の策定に関わる業務を行い、そして現在は厚生労働省に戻り、流通する医薬品や医療機器の監視指導などに携わっています。このように約2年ごとに異動があり、医薬品とは関連のない分野を含めて多様な業務を経験します。 薬剤師でなくても薬系技官にはなれますが、医薬品に関する業務において薬学部で学んだ専門知識が活かされるのはもちろん、思わぬところで、理系の基礎的な知識、実習や研究室での経験が役に立つ場面があると感じています。内閣官房で働いていた際は、薬剤師免許を持っていることで、他省庁の職員から認識されたり、薬や医療に係る照会を受ける機会もありました。 おそらくどのような職業であっても、大学で学んだことをそのまますぐに活かせるわけではなく、社会に出てから勉強しなければならないことが多いはずです。そうした中でも薬学部での学びは様々な場で活かせるものだと思います。 岡山大学では薬学科から薬剤師以外の仕事に就く人も多く、将来について広い視野で考えることができました。薬学部で興味のあることを学びながら、専門性にこだわりすぎず柔軟に将来の進路を考えてみてもよいのではないかと思います。
病気で闘う患者さんを救うためのサイエンス
小野薬品工業株式会社 オンコロジー研究センター(平成25年卒) 奥田 洸作
私は博士号(薬科学)取得後に小野薬品工業株式会社に入社し、がんを対象疾患とする部署であるオンコロジー研究センターで薬理研究員として勤務しています。まず、薬学部進学のきっかけは、高校生の頃にマイコプラズマ肺炎にかかった時に「自分を楽にしてくれた薬が自分の身体にどんな影響を与えたのか」について調べ、薬の作用機序の美しさに感動して創薬に興味を持ったからです。昔から動植物の観察や実験が好きな性格であったこともあり、学部生の頃は「研究者として何か世の中の役に立ちたい」と漠然と考えておりましたが、高度な思考や技術を習得して国際的に影響を与える研究者になるには博士号取得が必要条件であると考え、大学院進学を決めました。その後、新しいがんの発症メカニズムを研究して新薬候補を探した経験を通じ、最先端の新薬開発に携わりたいと感じたため、製薬企業の研究職を志望しました。 薬理研究職は新規治療薬のタネを探索し、どれほどの有効性があるかを検証する仕事です。新薬開発の成功確率は決して高くなく、ほとんどの研究テーマはお蔵入りになります。そのため、失敗しても情熱を保つための忍耐力と経験を次に活かそうとするポジティブ思考が必要とされます。私も業務の難しさや自身の至らなさから挫折しかけることが多々ありましたが、新薬開発を待ち望んでいる患者さんをいち早く救うという大義名分を思い出し、一歩ずつ前進しています。世界中が驚く新薬を創造する過程に携わる刺激的な体験は何にも代えがたいものがあります。 研究室で学んだことが直接業務に役立つことは少ないかも知れません。しかしながら、答えのない問題の解決法を探していく中で養われる論理的思考や実行力は、将来どのような道に進んだとしても一生の財産となります。私も最初は挑戦的な研究テーマをどのように進めていくか苦心しましたが、指導教官のご指導や研究室メンバーとの切磋琢磨のお陰で、成果に結びつけることができました。また、憧れであった製薬企業の研究職に就けたのも、岡山大学薬学部で高度なサイエンスの知識と技術を真面目に学んだ結果と考えています。薬学研究者はサイエンスの楽しさを医療の世界に還元できる素晴らしい職業ですので、進路を迷われている高校生の皆様、また、新薬開発が格好良いと感じている学部生・大学院生の皆様に是非ともお勧めします。
合理的な薬物治療の実践に向けて基礎科学力を磨こう!!
徳島大学大学院医歯薬学研究部 医学域 医科学部門内科系 臨床薬理学分野 教授 徳島大学病院 薬剤部長(平成9年卒) 石澤 啓介
私は岡山大学を卒業して故郷に戻り、徳島大学病院で7年間、薬剤師として勤務しました。薬剤師は患者さんの病態が刻々と変化する現場に数多く直面し、その都度、安全かつ合理的な薬物療法を選択、提案しなければなりません。そのため薬剤師は論理的思考力を発揮することが非常に大切です。医療はサイエンスに基づき実施されるため、臨床で必要な能力と基礎研究で必要な能力には多くの共通点があります。私は臨床経験を積んだことで基礎研究の重要性と魅力を感じ、その後8年間、基礎研究に没頭する機会を得ることが出来ました。平成26年8月より徳島大学大学院医歯薬学研究部医学域教授、徳島大学病院薬剤部長を拝命し、臨床・研究・教育に従事する日々を送っています。 薬学生の皆さんには、将来、薬剤師あるいは研究者など数多くのキャリアパスが待っています。しかし人生は一度きりです。いかなる環境に身を置いても最大限の努力を払い、常に自分の足跡を残し続けられるよう心がけて下さい。小さな積み重ねが10年後、20年後の自分に大きなチャンスを与えてくれるでしょう。将来、医療あるいは研究のフィールドで共に働けることを楽しみにしています。
可能性に向かって突き進んで
京都大学生命科学研究科/薬学部 教授(平成5年卒) 井垣 達吏
私は高校生の頃から研究に憧れを持っていました。将来は医学・生物学に関わる研究をしてみたいという気持ちと、高校では残念ながら生物学を学ぶ機会がなかったという現実から、薬学部への進学を選びました。岡大へ入学後は部活に明け暮れる劣等生になってしまいましたが、3年生の前期に学んだ分子生物学の面白さに打ちのめされてしまい、以来、授業だけでは物足りず自分で教科書を買い漁りながら勉強し始めました。4年生からの研究生活は本当に楽しいものでした。初めての実験データを得た時、この世でこのデータを知っているのは自分だけなんだと思うと興奮して夜も眠れなくなったのを今でも覚えています。岡大で修士課程まで進んだ後、もっとスケールの大きな研究をしてみたいという気持ちから製薬企業の研究所に就職しました。製薬会社では4年間基礎的な研究に従事し、多くのことを学びました。ある日の昼休み、研究所の図書館で論文を読みながら世界の基礎研究のスピードに愕然として、自分の求めているものはアカデミアにあるんだということを思い知らされました。そこで製薬会社を辞めて、大阪大学の大学院博士課程に進み、学位取得後はYale大学へ留学、4年半の(夢のような)アメリカでの研究生活を経て神戸大学で独立する機会を得ました。そして、5年間の神戸での研究生活を経て、1年前に京都に移ってきました。大学院生命科学研究科に所属していますが、学部は薬学部を担当しており、研究室も薬学部にあります。岡大を出た後はずっと医学部を渡り歩いてきたので、ついにふるさとに帰ってきたような、そんな気持ちです。ラボメンバーたちと日々サイエンスを楽しみながら、「細胞競合」と呼ばれる細胞間コミュニケーション機構の解明を目指しています。 振り返ると行ったり来たりしているようにも見えますが、私の中ではずっと同じ方向を向いてきたつもりです。研究をしたい、という気持ちだけです。神経成長因子を発見してノーベル賞を受賞したレーヴィ=モンタルチーニ博士は、サイエンスには「立ちはだかる障害を過小評価する能力」が重要だと言っています。高校生の皆さんには、可能性に溢れた未来に向かってひるまず、自分のハートに従って突き進んでいってほしいと思います。
限界は突破するためにある
広島大学大学院医歯薬保健学研究院 教授(平成5年卒) 黒田 照夫
中学3年の3月、第一志望の高校の受験直前に、感染症により入院・手術したため、私は志望高校の受験すらかないませんでした。あと半日手術するのが遅かったら生命さえも危うい状態だったと後で主治医から聞かされました。3カ月の入院中、相当な挫折感を味わいましたが、その時私は「こんなつらい思いをする子供は私で最後にしたい」と子供ながら(!)思いました。そして「感染症を理解したい、微生物の遺伝子の研究がしたい」と考え、岡大薬学部に入学しました。 念願かない、4年生から微生物の研究を始めることができました。初めて見る実験データに感動し、なかなか揃わない数値に悪戦苦闘しながら、博士課程を修了するまで6年間学生としての研究生活を送りました。この間、アメリカへの短期留学もさせていただき、また東京大・分子細胞生物学研究所での研究にも携わることができました。良い先生・研究室の仲間に囲まれて厳しくも楽しい有意義な毎日でした。 その後遺伝子実験施設(現自然生命科学研究支援センター・ゲノム・プロテオーム解析部門)の助手として採用され、薬学部・助手、准教授を経た後、現在は広島大学で抗菌薬耐性機構の解明や新規抗菌薬の開発を目指して研究を行っています。 私が入学した当初、この分野では一つの遺伝子の塩基配列を決めただけで、相当レベルの高い学術誌に論文を発表できていました。時は流れ、今や細菌であれば数日で一遺伝子どころかゲノムの全塩基配列が読めてしまう時代です。しかし微生物の謎は深まるばかりです。そのような中でサイエンスの醍醐味を味わいながら毎日楽しくやっています。