研究
research
創薬有機化学(好光 健彦)[受験生・一般の方向け]
こんなことを研究しています
我々は、有機化合物の新しい合成方法の開発と、創薬を志向する生物活性天然物の全合成（化学合成により人工的につくること）に関する研究を行っています。天然物の全合成は、一原子単位で分子を組み上げる化学技術を駆使した物質創製に関わる科学であり、天然物をモチーフとして、自然界には存在しない物質を設計・合成し、価値ある医薬資源を我々の手で生み出すことに繋がります。我々は、さまざまな生物活性天然物の全合成を達成し、これをもとに国内外の研究者と協力して創薬・生命科学研究を進めてきました。その結果、海洋産天然物が脳腫瘍や心疾患の創薬に新たな可能性を拓くことや、脂肪酸合成酵素阻害活性天然物が多剤耐性結核菌の増殖を顕著に阻害することなどを明らかにしています。こうした有機化合物の合成において、我々が特に着目しているのが、多彩な反応性を示すフリーラジカルが引き起こす化学反応です。我々は独自に開発したラジカル反応を活用することによって、これまでの方法では困難であった天然物の人工合成にも成功しています。
教員紹介
- 好光 健彦／Takehiko YOSHIMITSU
専門分野：有機合成化学，ラジカル化学，天然物合成
受験生、在学生にひとこと
生体内ではさまざまな有機分子が巧妙に関わり合って機能しています。有機分子を自在につくり、活用することにより生体の仕組みや働きを制御しようとする試みは科学が目指してきた目標のひとつです。創薬を目指す有機合成化学はまさにその好例といえるでしょう。“分子は、原子が電子によって結び付けられて或る形をつくっているにすぎない。”これは、私が教員となって間もない頃に有機化学の講義資料で綴った言葉です。しかし、”或る形をつくっているに過ぎない”はずの小さな分子がさまざまな機能を発揮する世界はとても興味深いものです。自然界に存在する天然物はもとより、我々の体内で働く生体分子など、あらゆる有機分子の機能がその化学構造によって制御されていることから、化学構造を自在につくり、改変できる有機合成化学への期待が今後益々高まるでしょう。我々はこの化学を洗練する匠となり、役立つ物質を生み出すことで世界に貢献したいと思っています。