主な研究テーマ

小胞型神経伝達物質トランスポーターの構造・機能に関する研究

  1. 小胞型興奮性アミノ酸トランスポーターと小胞型ヌクレオチドトランスポーターの輸送メカニズムの解明
  2. アスパラギン酸とプリン性化学伝達の生理的意義の解明

研究の概要

神経は伝達物質をシナプス小胞へ濃縮しシナプス間隙に開口放出することで、後シナプス側にシグナルを伝達する(化学伝達)。小胞型神経伝達物質トランスポーターはシナプス小胞に神経伝達物質を濃縮するための分子装置であり、化学伝達に必須である。このトランスポーターを搭載した分泌小胞には対応する基質(伝達物質)がそれぞれ濃縮されており、その近傍で開口放出される。つまり、小胞型神経伝達物質トランスポーターは化学伝達の種類と開始点を決定する分子プローブといえる。我々は様々な新規小胞型トランスポーターを同定し、構造・機能研究を通じて伝達物質における化学伝達の生理的意義を解明することを目的としている。

最近の成果

  1. アスパラギン酸は海馬神経のシナプス小胞に存在し、高次精神活動を司るNMDAレセプターの天然のリガンドである。しかしながら、小胞内の濃縮機構が全く分かっていなかったため、アスパラギン酸化学伝達の全体像が不明であった。我々はこの小胞内への濃縮を司る分子実体を世界に先駆け同定し、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)と名付けた。この発見により、神経障害を引き起こすサラ病とアスパラギン酸化学伝達が関連していることが明らかになった。(業績3)
  2. ATPなどのヌクレオチドは痛みや味覚、神経再生、炎症、免疫、血小板凝集など多彩な生理・病態と密接に関わる伝達物質として働く。しかしながら、アスパラギン酸と同様、ヌクレオチドを小胞内に濃縮する分子実体がわかっていなかった。我々はこの分子実体を同定し、小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)と名付けた。現在、VNUTを標的とし、この化学伝達の生理的意義を解明しようとしている。

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最近の主な発表論文

  1. Type1 sodium dependent phosphate transporter (SLC17A1 protein) is a Cl- dependent urate transporter.
    Iharada M., Miyaji T., Fujimoto T., Hiasa M., Anzai N., Omote H. and Moriyama Y. J. Biol. Chem. In press (2010)
  2. The ABC transporter AtABCG25 is involved in abscisic acid transport and responses.
    Kuromori T., Miyaji T., Yabuuchi H., Sugimoto E., Kamiya A., Moriyama Y. and Shinozaki K.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107 2361-2366 (2010)
  3. Identification of a vesicular aspartate transporter.
    Miyaji T., Echigo N., Hiasa M., Senoh S., Omote H. and Moriyama Y.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105 11720-11724 (2008)
  4. Identification of a vesicular nucleotide transporter.
    Sawada K., Echigo N., Juge N., Miyaji T., Otsuka M., Omote H., Yamamoto A. and Moriyama Y.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 5683-5686 (2008)

教員紹介

  • 宮地 孝明/Takaaki MIYAJI
    専門分野:生化学
    所属学会:日本生化学会、日本薬学会、日本神経科学会

 

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