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博士課程前期1年生中上栞里さん(生体機能分析学分野)がポスター賞を受賞しました。
2024.10.08
令和6年7月26日~ 27日に第20回日本中性子捕捉療法学会が大阪府高崎市で開催されました。博士課程前期1年生の中上栞里さん(生体機能分析学分野)がポスター発表を行い、ポスター賞を受賞しました。
発表演題 : BSH の細胞内送達のための新規 CADY 誘導体の合成と評価
発表者 : 中上 栞里¹、上田 真史¹、田中 智博¹、上田 大貴²、鈴木 実²
(¹岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 薬科学専攻、²京都大学 複合原子力科学研究所)
研究内容:
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)はがん細胞に取り込まれた¹⁰B(ホウ素の同位体の一つ)薬剤に中性子線を照射することで生じたα線を利用する新たな放射線療法であり、次世代のがん治療法として期待されています。現在、臨床ではアミノ酸誘導体であるステボロニン(BPA)が¹⁰B薬剤として用いられていますが、その投与量や腫瘍滞留性にはまだ改善の余地があります。そこで、私たちはBNCTの治療効果の増強や副作用の軽減を目指し、がん細胞の中へとホウ素薬剤を送達する分子の研究を行っています。
今回受賞した研究では、第一世代の¹⁰B薬剤として知られるBSHをがん細胞の中に輸送するためのペプチド性キャリア(運び屋)の創出に成功しました。BSHはBNCT研究の黎明期に¹⁰B薬剤として開発されましたが、その細胞内移行性が低く、治療効果も低い事から現在ではあまり使われていませんでした。私たちはBSHが負電荷を有する事に着目し、反対の正電荷を有する細胞膜透過ペプチド(細胞内への移行を促進するペプチド)を用いることで複合体を形成し、BSHの細胞内取り込み量を大幅に改善できると予想しました。実際に、細胞膜透過性ペプチドとして知られる21残基のペプチド(CADY)とBSHを混合し、細胞に添加したところ、BSH単独に比べ大幅に細胞内取り込み量が向上する事がわかりました。この成果は¹⁰B薬剤を細胞内に届ける画期的な方法論として本学会で高い評価を受けました。
参考URL: 第20回日本中性子捕捉療法学会 (jsnct20.jp)
(お問い合わせ:生体機能分析学分野 田中智博)